世界最大級の博物館であり、ロンドン随一の観光地である大英博物館。このブログでも常設展の紹介や素晴らしい特別展の数々をレポしてきたが、何度訪れても、足を踏み入れるたびにその質と量には圧倒される。
実は、他の有名ミュージアムであるロンドン自然史博物館と大英図書館も、元は大英博物館の一部であったのだ。この記事ではそれも含め、大英博物館のちょっとした歴史とその規模の広さを紹介したい。
創立は1753年:世界で初めての無料、国立、公共の博物館
大英博物館が創立されたのは1753年、オープンしたのが1759年。世界で初めての、国立かつ無料で公に開かれたミュージアムである。
ちなみに、国立というくくりを外した場合、イギリス初の博物館はオックスフォード大学が運営するアシュモレアン博物館(1683年設立)で、また世界初の大学博物館でもある。

収蔵品数は800万点、年間訪問者は590万人
大英博物館の収蔵品の幅はすさまじい。古代エジプトからヨーロッパ、アメリカ大陸、アフリカ、インド、中国、その他アジア、ポリネシア、古今東西世界中の歴史と文化を伝える品物を所蔵している。
大英博物館のブログによると、所蔵品数は800万点に上るという。実際に展示されているのはそのうちの1%。つまり8万点が、7フロアにわたって展示されているのだ。何日かかっても見切れない量である。
イギリス中はもちろん、世界中から観光客が来る施設であるため、入館者数も圧倒的だ。コロナ前直近(2019年4月~2020年3月)の年間訪問者数は約590万人。そのうちの十何回かは私であろう。また、2019年の「世界のミュージアム訪問者数トップ20」のランキングでは5位にランクインしている。
比較として、1位であるフランスのルーブル博物館は960万人、日本で最も訪問者数が多いとされる国立科学博物館は270万人(どちらも2019年)である。
収蔵品は誰のコレクションなのか
大英博物館の基礎となったコレクションは、医師でありコレクターのサー・ハンス・スローンの個人収集品であった。そこに、政府が購入した他のコレクターの書籍・文書コレクションが加わり、大英博物館がオープンした。
1753年にスローンが亡くなった後、彼の遺志に基づきコレクションはイギリス政府に寄贈された。その数は約7万1000点だったという。前述したように、現在大英博物館に展示されている品物は8万点だから、スローンはすでにほぼ同等の規模のコレクションを持っていたわけだ。これだけでもすごいが、ここから260年の間に100倍、つまり現在の800万点に成長したのだから、その増加は驚くべきものだ。
さらに、1823年に国王ジョージ4世が父ジョージ3世から受け継いだ大量の蔵書を寄付した。それを収める場所として増設されたのが、現在「The Enlightenment Gallery(第1室)」として残る、キングズ・ライブラリーである。
大英博物館で一番古いこの部屋は、好奇心を刺激する品物をぎゅっと詰めた素晴らしい空間なので、大英博物館に行ったらぜひとも入ってほしい。

余談だが、この頃までに、目玉の一つであるロゼッタ・ストーンはすでに大英博物館のコレクションに入っていた。フランスがエジプトで発見したロゼッタ・ストーンをイギリスが奪い取ったとされるが、具体的にどのような経緯でイギリスにわたることになったのかは明らかになっていない。
3つに分かれた博物館
年月と共にどんどん増加する品物を収蔵しきれなくなり、一部の収蔵品を移すために大英博物館から新たな博物館が2つ誕生することとなった。
1881年に自然史博物館が設立
自然科学分野の収蔵品に特化して保存、展示するための場所として、大英博物館から離れた西ロンドンに1881年にオープンしたのが自然史博物館だ。大英博物館の分館として、British Museum (Natural History)という名称で呼ばれれていた。
自然史博物館の設立を率いた自然科学者のサー・リチャード・オーウェンは、あらゆる動植物、小さなものからクジラや恐竜のような巨大なものまですべての標本、新発見したものを所蔵できる建物を作ろうとした。彼はそれを「a cathedral to nature(自然のための大聖堂)」と呼んだ。
そして完成したのが、まさに荘厳な大聖堂のようなこの博物館であった。内装も自然科学に関するモチーフで装飾が施されており、大変美しい。
1963年に大英博物館から独立してからも、しばらく正式名称は「British Museum (Natural History)」のままで、現在の自然史博物館という名称に変わったのは1992年と割と最近のことだ。
住所:Cromwell Rd, South Kensington, London SW7 5BD
入場無料
1973年に大英図書館が設立
自然史博物館よりもずっと後、1973年にできたのが大英図書館だ。世界最大級の国立図書館であり、蔵書は約2億冊と見積もられている。中世の写本やシェイクスピアの著作初版などの貴重な古書が見られる展示室や、特別展示を行う部屋がある他、実際の資料閲覧、研究に使える施設でもある。
大英博物館併設の図書館に所蔵されていた膨大な書物コレクションを核として、他の国立図書館が複数統合し、大英図書館を設立することとなった。先述したキングズ・ライブラリーのジョージ3世の蔵書も、現在はここに収められている。
また、大英図書館の分館が西ヨークシャーのボストン・スパというところにある。
住所:96 Euston Rd, Somers Town, London NW1 2DB
入場無料
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