イタリアの巨匠、カラヴァッジョ(1573-1610)の展示「Beyond Caravaggio」(2017年1月15日まで)がロンドン・ナショナル・ギャラリーでやっているので行ってきた。
正式な名前はミケランジェロ・メリージ・ダ・カラヴァッジョという。あのルネサンスの彫刻家/画家と同じ名前。英語だとミケランジェロは「マイケランジェロ」って発音する。
カラバッジョと、「カラヴァジェスティ」と呼ばれる、カラヴァッジョの影響を受けた画家の作品を展示していた。カラヴァッジョは天才的な技術を持った芸術家だけど、その人生は波乱万丈で、人を殺して亡命したりしている。
カラヴァッジョの作品
「洗礼者聖ヨハネ」
数ある作品の中で一番好きだったのが、この「洗礼者聖ヨハネ」。もうあまりに美男子で素敵すぎて目が離せなかった。森の中で何かを待っているような雰囲気。この絵から物語が生まれそうだ。
カラヴァッジョは宗教画や神話画を多く描いたけれど、表現がリアリティに溢れていて、まさに動きが起こった「瞬間」を描く。
物語的な絵画だ、と見るたびに思う。
「キリストの捕縛」
カラヴァッジョの絵は、暗い空間に、人や物が明るく浮き上がっているものが多い。
光と影の明暗の違いを、極端なまでにはっきりと描き分けるのがカラヴァッジョの手法だ。これはイタリア語で「キアロスクーロ(明暗法)」と呼ばれる。
カラヴァッジョは、彼の時代の少し後に全盛期となる、「バロック絵画」の初期の代表的な画家として分類されることもある。
「エマオの晩餐」
右の男性はキリストの弟子で、この赤い服を着た男が処刑されたはずのキリストだと気付いて驚く仕草をしている。この男性の大きく広げられた腕によって、画面内の奥行きも見事に表現されている。
「カラヴァジェスティ」の作品
ここからは、この展覧会で展示されていた「カラヴァジェスティ(カラヴァッジョの影響を受けた画家)」の作品のうち、よかったものを貼っていく。
Adam de Coster 「A man singing by candlelight」
蠟燭の光を頼りに歌を歌う男。光の表現が見事。照らされているところ以外は真っ暗。絵を描いて、ほとんどを黒で塗りつぶすって実はなかなか勇気のいることだと思う。
蝋燭の光源と明暗を描く手法は、この時代に流行した。一部だけを強烈に照らす蝋燭の光は、画家たちにとって挑戦したいと思わせるものがあったのだろう。
Nicolas Régnier 「Saint Sebastian Tended by the Holy Irene」
弓で打たれた聖セバスチャンの体が青白くてゾンビみたいで「生々しい……」となった作品。画像だとわかりにくいけど、本物はより劇的である。暗い背景と白い裸体の対比が強烈。
そしてその白い体を包む真っ赤な布が、さらにドラマ性を強調する。
Orazio Riminaldi「Cupid Asleep Approached by Venus in Her Chariot」
眠るキューピッド。可愛いね~。ふっくらとした子どもらしい体の質感がよく表現されている。こちらも、暗い色を使った背景ながら、天の光が後景を照らしている。雲の隙間に現れたのは、キューピッドの母であるヴィーナス。
遠景に小さく映るヴィーナスと、手前に大きく描かれたキューピッドも対比の構図となっている。
この「眠る天使」を描いたものがカラヴァッジョの作品にもある。
カラヴァッジョ「Sleeping Cupid」
こっちのカラヴァッジョの作品の方が、明暗がより強く、雰囲気も怪しげ。背景は何があるか見えないくらい暗い。
本当はもっともっと興味を引いた作品がたくさんあったけれど、写真禁止の展示だし、ネット上でも画像を引っ張ってこれないので断念。
一口に「カラヴァジェスティ」と言っても、本家カラヴァッジョに近いもの、全然違う作風に見えるものなど、様々で面白かった。でもやはり、「カラヴァッジョ主義」とでもいうべき唯一無二のジャンルを生み出したカラヴァッジョは天才だなあ、と圧倒されて帰ってきたのでした。
以下の記事でもカラヴァッジョの作品を一部紹介しています。
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