前回に続き、オックスフォードのアシュモレアン博物館で見つけた、素晴らしい&面白い作品群を紹介したいと思う。
※Photos on this page are with permission of the Ashmolean Museum, University of Oxford.
変なものたち
工芸品が並ぶ一角で見つけた作品。
なんだこいつ……。妖怪?
いきなりですいませんね。なんでこんなギャグマンガを地で行くような顔をしているんだろうか。しかも120年も前の作品だというのに。
こういうのこそ解説がほしいのに! ない! 鼻の穴とかかなりくっきりしてて人間ぽい顔をしている。アジア的なコミカルさ。でも作者はMartin Brothersというイギリスの兄弟らしい。不思議。
とある話題になった豚の貯金箱と同じ部屋にあった作品。
なんか4つん這いでカサカサ這ってくるのを想像してしまうような浮き彫り。こんなのと夜中に遭遇したら失神すると思う。
ヤクシャとは、日本では夜叉と呼ばれている鬼神のこと。人を食う残虐性と、恩恵を与えるという慈悲の面を持ち合わせている。
男女どちらもおり、男はヤクシャ、女はヤクシニーという。この像はヤクシャか、またはガナというヒンドゥー教の神シヴァの眷属であるらしい。ガナ型ヤクシャというのもいるそうなので、それの可能性もある。
重いものを支えているような態勢なのは、実際これが建物の台座だったからか。「縁の下の力持ち」のような感じ?
楽器コレクションの部屋も
楽器専用の展示室もあった。音楽関係に特化した展示室を持つ博物館は珍しい。
ずらりと並ぶバイオリンたち。
私の音楽への造詣はびっくりするほど浅いのだが、その中にあった名器、ストラディバリウス(かろうじてわかる)は「あっこれは超お高いやつね!」と一応カメラに収めておいた。
この部屋の壁には、音楽をテーマにした巨大なタペストリー(織物)がかけられていた。
精密な調度品の数々
工芸品も多く展示されていたが、特に目を見張ったものを取り上げたい。
象牙で彫られた裁縫箱。狂気を感じるほど細かい。日本の螺鈿や漆などのように、ヨーロッパへ輸出するために製作された品。ボビンのようなものまで象牙で彫られている。
実用的なものというよりも、装飾品として使われたんだろう。
これは2対セットで机の上で展示されていた彫刻。キャプションがなかったので、誰の作なのか、いつの作なのかは不明。
ユニコーンがドラゴンを角で刺している、躍動感あふれる場面だ。馬の腹に爪を立てるドラゴンの脚が妙にリアル。
これが対の作品。狩猟犬が狼? を噛み殺している。ユニコーンとドラゴンは伝説上の生き物の戦いだが、こちらは随分世俗的というか、実際にあった場面のようなモチーフだ。
てっきり中国の作品だと思っていたら日本だった。有田焼の作品。取っ手は白象の頭になっている。
下部には鳥付きの鳥籠が。このタイプの壺は20個ほど知られており、そのうち12個は、ポーランド・リトアニア共和国の王であったアウグスト2世のコレクションに納められている。
もしかしたら、アウグスト2世の注文が当時の有田に届いていた可能性もあるという。
こんなスタイルの壺は人生で初めて見た。壺と鳥籠をくっつけようなんて斬新すぎる。
この船、クローブというスパイスを組み合わせてできているのだ。
参考↓
もっと近づいて見るとわかりやすい。
クローブを大量につなぎ合わせて、船と船乗りが形成されている。変わったミニチュア作品である。インドネシアはスパイスが豊富に採れ、1600年頃からこのクローブでできた船を作るのが流行したという。
確かに、クローブ1つ1つは、それなりに長さもあり、節もあるので、木材で船をつくるような感覚と近いのかもしれない。
これはインドネシアのモルッカ諸島のコラコラ(kora kora)という伝統的な船なのだそう。
コインのコレクションを保管するためのキャビネット。フィッツウィリアムというのは元の所有者の名前である。
イタリアのフィレンツェで作られたものだが、スタンドのみイギリス製。さまざまな宝石や貴石を組み合わせたピエトラ・ドゥーラという製法である。これがまた、近寄ってみるとすごかったのだ。
螺鈿にも通じるようなこの象嵌細工。カラフルな部分はすべて石がはめ込まれているのである。
これは正面扉の左側の拡大図。崖のごつごつした質感がよく出ている。やはり石だからか……。
海の波の表現に注目してほしい。これはこのような模様の石を選んでここに当てはめたのである。この絵を見ていると、石の中には自然の要素全てが詰まっているんじゃないかと思えてくる。
これは側面にあった象嵌。この色彩の豊富さには感動してしまう。背景が黒であることでより石の美しさが際立つ。
クリクリの巻き毛を持つ、とっても可愛い洗礼者ヨハネの彫像。柔らかな物腰と慈愛に満ちたように見える目は、女の子らしくもある。
作者のグレゴリオ・ディ・ロレンツォは、長らく正体不明の「Master of the Marble Madonnas」という名で知られていた彫刻家(または彫刻家のグループ)だが、近年、ある文書が証拠となりグレゴリオであると判明したという。
住所:Beaumont St, Oxford OX1 2PH
入場無料
前編では超有名な古代ギリシャ・ローマの像や、エジプト遺跡にまつわる展示品について紹介しているので、こちらもぜひどうぞ。
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